チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

これは実話を元にしたホラー映画である

テキサス選出の下院議員チャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)は、美女と酒をこよなく愛するお気楽議員。ある日、彼は、テキサスを代表する富豪にして反共主義者ジョアン・ヘリング(ジュリア・ロバーツ)から、ソ連の侵攻に苦しむアフガニスタンの人々を救ってほしいと頼まれる。アフガンの現実を実際に見て、行動する決意を固めたチャーリーは、CIAのはみ出し者、ガスト・アブラコトス(フィリップ・シーモア・ホフマン)の協力を得て、前代未聞の極秘作戦を開始するのだが……。


ブラック・コメディ風に演出されているが、この作品はまぎれもなくホラー映画だ。それも凄まじく怖ろしい。何故なら、この世界は、こんなにスーダラな、行き当たりばったりな奴らに陰からコントロールされていたのだという寒気がするような現実が克明に描かれているからである。そして何をコントロールし損ねたのかも。/今や誰もが知っているように、チャーリー・ウィルソン氏とその一味がアフガニスタンを解放して、それがソ連の解体につながって、この映画の宣伝コピーを借りて言えば「世界を変えた」おかげで、2001年9月11日に、あのとんでもない惨劇が起こり、それ以前と以降とでは世界の状況は全く変わってしまった。つまり彼は二度「世界を変えた」ことになる。全く素晴らしい。あまりの恐怖にゲロを吐きたくなる。/もちろんマイク・ニコルズに、結果としてホラー映画を作ってしまったなどという意識はゼロだろう。ならば彼は何を思って、こんな映画を作ったのだろう? 結局はイラク戦争の引き金につながってしまったけれど、チャーリーの(つまりアメリカの)当時の行動は間違っていなかったと主張するためか? どうもそんな感じがするが、そういうのを「後出しジャンケン」というのである。くだらない自己弁護はやめて、現実を見ろ、と言いたい。