パーク アンド ラブホテル

3人の「娘」とひとりの「母」の物語

屋上に公園がある奇妙なラブホテルを舞台に、家出をしてきた銀髪の少女・美香(梶原ひかり)、毎朝、ホテルの前をウォーキングしつつ通り過ぎる主婦・月(ちはる)、毎回違う男とやって来る、このホテルの常連・マリカ(神農幸)と無愛想なオーナー・艶子(りりィ)との間に起こるささやかなドラマが描かれる。/ところで僕たちは、いつの間にか人間関係を築くことが、とても下手になってしまった。隣に住んでいる人間でも会話さえ交わせない(そもそも誰が住んでいるかさえ知らない)。近所に住んでいて、よくすれ違う人とも挨拶もできない。何かが僕らを分断している。/この作品に登場するラブホテルの屋上は一種の「解放区」になっており、子供から老人まで集まってくる。ここでは世代を越えてコミュニケーションが成立している。それはたぶんラブホテルという場所が、人間が本能を解放する場所だからだ。階下で行われている行為が屋上の公園に影響を与えているのである。/ホテルのオーナー・艶子は、この場所に集う彼らの話し相手であり、友人であり、そして擬似的な「家族」の役割も果たしている。恐らく美香、月、マリカの3人は、彼女に「母」を見た。そして、それぞれが「母」である艶子に相対することで救われる。同時に艶子もまた救われていく、その内なる孤独が癒されることによって。/ここには新しい「家族」のあり方が示されている。血縁のない、シンパシーのみによって構成される「家族」の姿が。