母なる証明

母の闇・息子の闇

監督:ポン・ジュノ
脚本:パク・ウンギョ/ポン・ジュノ
音楽:イ・ビョンウ
出演:キム・ヘジャ/ウォンビン/チョン・ミソン 他
ストーリー:静かな田舎町の漢方薬店で働く母(キム・ヘジャ)にとって、軽い知的障害を持つ息子・トジュン(ウォンビン)の存在は人生の全てだった。そんなある日、女子高生が無惨に殺される事件が起き、容疑者としてトジュンが逮捕されてしまう。息子の無実を信じる母だったが、刑事も弁護士も彼女の訴えに耳を貸そうとしない。自ら真犯人を探すことを決意し、行動を開始する母だったが……。


本作を観た人は誰もが思うことだろうが、この「母」(役名はない)は本当に恐ろしい。息子への愛のために、ここまでやるか。「母性愛」という言葉はよく耳にするけれど、それは、実はこんなにおぞましい表われ方をし得るものなのだということを見せつけられて震撼した。
しかし、それ以上に怖いのは息子のトジュンである。彼は本当に知的障害を持っているのか。いったいどこまでが真実の姿で、どこからが嘘なのか。それが実の母でもわからないのだ。それでも息子を守らざるを得ない母。そしてそうなることさえ見透かしているかのような息子。
……本作はミステリーであると同時にホラーでもあると、僕は思う。見境なく盲目的な愛を与え続ける母が怪物なら、母の愛を惜しみなく奪い続けて平然としている息子もモンスターだ。この映画は全世界の母と、その息子たちに恐怖を与え得る、前代未聞のホラー映画なのだ。