THE GUILTY/ギルティ(2018)

製作国:デンマーク
監督:グスタフ・モーラー
脚本:グスタフ・モーラー/エミール・ニゴー・アルバートセン
音楽:カール・コールマン
出演:ヤコブ・セーダーグレン/イェシカ・ディナウエ/ヨハン・オルセン/オマール・シャガウィー 他
★★★★☆


電話の相手の顔は見えない

全く自慢にならない特技なんですが、僕はこれといった訳もなく会社を休みたくなって、仮病を使ってサボることにした時、上司への電話でいかにも体調不良っぽい声を出すのが得意です。本当はハナクソほじりながらYouTubeを眺めつつ電話してるのに「大丈夫? 無理しないで明日も休んでいいから」とか言われるほど苦し気な声を絞り出せるという才能がある。
以下、当たり前中の当たり前のことを堂々と述べますけど、そうやって上司をコケにして会社をサボれるのも、電話が基本的に音声しか伝達しないからです。これがもしも「テレビ電話」だったらそうそううまくはいかない。顔を真っ赤にしてウンウン唸るという小芝居も付け足さなければならず、面倒くさいことこの上ないことになります。ていうか簡単にバレる。21世紀になっても「テレビ電話」が一向に普及しないことには感謝しかない。
この電話というものの、繰り返しになりますが当たり前すぎて見逃されがちな「音声しか伝達できない」という性質を、作品中の「トリック」に最大限に利用したのが、この映画だと言うことができると思います。電話の向こうで本当は何が起こっているのか、それは電話ではわからない。そこに罠があるわけです。
とはいうものの本作で主人公が関わることになる「誘拐事件」の真相は、この手の作品を見慣れたカンの良い人なら割と早めに気づいてしまうだろうなとも思います。しかし、この結末はちょっと予想できないんじゃないか。そこに至るまでは「フーン、なるほどなるほど、やっぱりそうなるわけネー」などと余裕ぶっこいて観ていたんですが、完全に不意打ち的に熱いものがこみ上げてくるような次第になりまして、これは凄い作品だと思いましたよ。率直に言って一見の価値あり。