アンチクライスト(2009)

製作国:デンマーク/ドイツ/フランス/スウェーデン/イタリア/ポーランド
監督:ラース・フォン・トリアー
脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:シャルロット・ゲンズブールウィレム・デフォー 他
初公開年月:2011/2/26
★★☆☆☆

チ●コとマ●コの近くて遠い距離

この映画は、いきなり妻(シャルロット・ゲンズブール)と夫(ウィレム・デフォー)の濃厚なベッドシーンから始まる。二人とも全裸で大熱演である。
それにしてもシャルロット・ゲンズブールもババアになったよなあ、などと思いながら観ていると、夫婦の、まだ幼い子供が家の窓から誤って転落してしまう。
次のシーンでは二人は喪服を着ており、子供が死んでしまったのだということがわかる。「自分がセックスに夢中になっていたばっかりに子供が死んでしまった」というシビアすぎる現実に打ちのめされ、精神的にすっかり参ってしまう妻。こういう場合、夫としては普通なら精神科にでも連れていくんだろうが、彼は職業がセラピストなので、自分で妻を治そうとする。
二人は山の中の森に山小屋を持っており、夫はそこに妻を連れていって治療を試みるのだが、この辺りから何やら不穏な空気が漂い始める。
精神が安定するどころか、逆にどんどんおかしくなり始める妻。夫は何とか妻をおとなしくさせようとするが、突如として狂気に侵された妻は、気絶させた夫の足首に穴を開けて鉄の棒を貫通させ、その棒に丸くて重たい砥石を通して夫を動けなくするという、極めてややこしい逆DVを敢行。目を覚ました夫は、当然のことながら恐怖に駆られ、無理やり脚を引きずって逃げ出し、その後を妻が追いかける。さらに目を覆いたくなるような出来事がたて続けに起こり、最後は悲劇で終わる。
僕は、これを一種の寓話として観た。二人は(ぼかしがいちいち入っているので定かではないが)チ●コもマ●コも剥き出しで、劇中何度も何度もセックスを演じる。しかし、チ●コとマ●コは密着しているのに、二人の心は離れてしまっているのだ。そしてそれはついに元には戻らない。だいたいそもそも二人は最初から本当に心が通い合っていたのか? 男と女は本当にひとつになれるのか。そんなのは単なる幻想なんじゃないの? そう嘯くラース・フォン・トリアーのどや顔がちらつく作品である。